2024年3月3日日曜日

映画「リトル・リチャード:アイ・アム・エブリシング」を観た

昨日は映画「リトル・リチャード:アイ・アム・エブリシング」を観た。
ロックンロールのパイオニアの1人、リトル・リチャードの伝記ドキュメンタリー映画だ。
映画では、過去のライブやインタビュー映像をを中心に、現在の視点からリトル・リチャードを語る形式となっていて、
これがとても良かった。
リサ・コルテス監督の力量が素晴らしいと思う。
リチャードはロックンロールを作り出した創始者でありながら、正当な評価をされていたとは言い難い。
そしてLGBTQ、性的マイノリティに対する社会の問題もしっかりと取り上げている映画で、
そうした点が”現在の視点”となり、リチャードをできるだけ正確に捉えようとする姿勢を感じた。

ライブやインタビューのいくつかは、これまでもロックの伝記ドキュメンタリーで見かけたものだったが、
そういう意味でもとても新鮮に感じることができるので、名前とヒット曲のいつくかは知っているけど、
という人も是非観た方が良い。

僕がリトル・リチャードを知ったのは、ロックに夢中になり初めてすぐのこと。
1986年のことだったが、1956年プレスリーの時代から、1年ずつロックの歴史を綴る名曲を特集するという
ラジオ番組があったんだけど、これが最高の教科書だった。
もちろんリトル・リチャードは1956年の特集で「のっぽのサリー」で紹介をされた。
ビートルズがカバーしていたのはもちろん聴き齧りはじめていたが、
リトル・リチャードの強烈なシャウトに、一発でノックアウトされた。
ロックンロールを作ったのは、リトル・リチャードやチャック・ベリーたちなんだ、と痛感した。
今もこの時代のロックンロールを聴けば、体が自然に動き出してしまう。
スイングするブギウギのリズム、強烈なシャウト・・・。
自分が生まれる15年以上前の時代の音楽なのに、今となってはすっかり自分の体を流れる血液のような、
そんな感覚を持っている。

今回のこの映画が素晴らしいと思った点だが、
リトル・リチャードの原点、ルーツともなった先駆者にも脚光を当てていることだ。
シスター・ロゼッタ・サープやエスケリータなんて、なかなか陽の目を見ない人たちたが、
こうした先駆者がいなければリトル・リチャードは居なかったのかもしれない。
ビリー・ライトも僕は詳しく知らないシンガーだったが、リトル・リチャードに影響をあたえた1人ということで、
とても興味を持ったので、早速聴いてみようと思う。

映画の中でもハイライトだったのは、長年の功績をようやく認められた、アメリカンミュージックアワードの場面だろう。
この場面はもらい涙してしまった。
是非映画館で観てもらいたい。

映画を観た後に改めて痛感したのは、リトル・リチャードはヒット曲のほとんどを自分で作り、
歌っているということ。
エキセントリックなステージアクションやファッションだけでなく、
しっかりとロックンロールの原点の名曲を作り出している点はすごいことだ。
まさしく、ロックンロールのパイオニアであり、”解放者”なのだと感じた。

映画でも登場するが、グラミーでのこの場面も強烈だ。
音楽業界、とりわけへ白人優位主義、正当な評価をしない連中への、
強烈なカウンターパンチであり、抵抗だったのだと思う。
もしもロックンロールに興味を持ったなら、リトル・リチャードをたっぷりと聴くべきだ。


リトル・リチャードの50年代のライブ映像