2026年10月3日土曜日

Stevie Wonder 「Songs In The Key Of Life」50周年

1976年という年は、70年代の音楽が大好きな自分にとっては、
数多くの名盤が世に出された年だ。
ロックやソウル、ファンクに限らず、ジャズやレゲエ、その他色々と名盤が多い。
その中でもポピュラー・ミュージックの歴史上、最重要な1枚が、
スティービー・ワンダーの2枚組アルバム「Songs In The Key Of Life」だと思う。
スティービー自身にとっても、このアルバムは重要な作品だろうし、
多くの人々に今もなお愛される名曲がたっぷり詰まった、屈指の名盤だ。

その発売50周年を記念して、なんとこのアルバムからの未発表曲4曲が、
主要な音楽配信サイトで聴けるようになった。

楽曲は、
It's Easier
My Life Story Of Love
I Can See The Sun In Late December
I'm Into Livin'
の4曲。

最初の「It's Easier」イントロから心を掴まれる。
聴こえてくるスティービーの歌声は、このアルバムの頃のあの声。
4曲というボリュームも、ちょうど良いのかもしれない。
いや、欲を言えば何曲でも聴きたいけれど、
もっと!という気持ちを掻き立てるこのボリュームが良い気がする。
続きが聴きたくなる場合、「キー・オブ・ライフ」本編に戻ることになるから。
楽曲によっては、リズムボックスも使用されており、
もしかしたら最終形の録音ではないのかもしれないが、
そんなことが気にならないぐらい完成度が高い。
むしろ70年代のソウルミュージックであることを考慮すれば、
こういったアレンジで完成したと言えるのかも。

自分にとって、スティービー・ワンダーはポピュラーミュージックを
聴き始めたかなり初期段階で名前と歌声を知った人だった。
「Part Time Lover」とか「I Just Called To Say I Love You」、
そして何より「We Are The World」の中心的な人物という認識だったのだ。
高校生の頃だったか、地元の岐阜へ中継を繋いでライブを行うという企画もあった。
長良川の河川敷で映像を観た記憶がある。

でも、本格的に彼の音楽を聴くようになったのは、大学生となり、
ソウルミュージック、ファンクにどっぷりと浸かり始めた頃だった。
1970年代のスティービーの作品、「Innervisions」や「Talking Book」などを聴いて、
衝撃を受けた。
70年代初頭に、すでにスティービーは自分一人で演奏を重ねたアルバムを作り、
極めて完成度の高い独自の音楽を送り出していた。
その流れのなかで、「キー・オブ・ライフ」にも出会い、夢中で聴いた。
バンドでカバーをするようになったのは、もう少しあとだけれど、
「I Wish」だとか「Another Star」「Sir Duke」「Isn't She Lovely」なんて、
もはや定番中の定番ではないだろうか。

そんな名作の、隠されていた未発表曲。
初めて聴くのになぜか懐かしさが込み上げる、そんな感覚。
ヴィンテージではあるけど、味わい深い素晴らしい楽曲だ。

4曲ともどれも好きだけど、中でも2曲目の「My Life Story Of Love」が良い。

僕の愛の物語


これは決して叶うことのない、僕の愛の物語
僕をこんなにも切なくさせる、愛の空想
言葉にできない愛で、空っぽの魂を満たしながら
愛する人の心を、黄金のように輝かせておくんだ

彼女を連れ戻すんだ
僕の「愛の庭」に彼女を迎え入れ
彼女を僕のものにして
「愛の花」として咲かせてあげる

雨の日も晴れの日も
涙を洗い流しながら、僕らは微笑み合う
言ってることは愚かだって分かってる
だって夜が来れば、その日の愛も洗い流されてしまうから

これは決して叶うことのない、僕の愛の物語
僕をこんなにも切なくさせる、愛の空想
言葉にできない愛で、空っぽの魂を満たしながら
愛する人の心を、冷たくさせてしまうんだ

ああ、方法を見つけ出すよ
この愛の騒乱を終わらせるために
彼女を遠くへ連れて行くんだ
僕の「愛の海」にある宝物の中へ

雨の日も晴れの日も
涙を洗い流しながら、僕らは微笑み合う
友達は、空想なんてするなって言うけれど
(そう、だって真実は容赦なくその瞳を見つめてくるから)
だから僕はいつもこう言うんだ

これは決して叶うことのない、僕の愛の物語
僕をこんなにも切なくさせる、愛の空想
僕の人生の物語(決して叶うことのない愛の物語)
空想にふけって過ごす人生(僕を切なくさせる愛の空想)
僕の人生の物語、ああ(決して叶うことのない愛の物語)
現実の物語であってほしかった(僕を切なくさせる愛の空想)
でも僕の人生の物語は、僕を切なくさせる愛の空想なんだ
僕の人生の物語、ああ、これが私の人生の物語(決して叶うことのない恋の物語)
...

しばらくはこの4曲、そして「キー・オブ・ライフ」を繰り返し聴くことになりそう。

2026年9月23日水曜日

映画色々

シルバーウィークはずっと雨。
元々大した予定も組んでいなかったけれど、
観たかった映画、かつて観た映画をまた観る機会があったので、
2日連続で映画館に行ってきた。

まずは劇場版イデオン。
そう、富野由悠季監督作品のあのアニメだ。
アニメ版イデオンは、当時テレビでも観たが、
結局よくわからないまま終わってしまったし、当時小学生の自分には、
理解不能だった。

監督や制作フタッフが描きたかった結末を含めた、
劇場版2部作が池袋の文芸坐で上映だったので観てきた。
「皆殺しの富野」で知られる監督だが、これは確かに壮絶な結末だった。
出演者は全員死ぬ。というか、文明として滅びていってしまう。

「イデ」の力を巡って、偶発的に対立する異星人たちの戦争が描かれるが、
2026年の現代において、人間を超えてしまったAI、核兵器開発、大国間の戦争、
憎しみを増幅する戦争被害など、まさに我々が目の当たりにしていることが、
この映画では預言的に描かれているように思えた。

子供の頃よりもずっと深刻に心に刺さる映画だった。

そして今日は、吉祥寺へ「ドラッグストア・カウボーイ」を観に行った。
日本公開が1990年の秋だったから、自分がまさに18歳の時の映画。
上京して少しずつ慣れ、映画やアート、ファッションとか色々なことに
興味が行った時期にふれた作品だ。
主役のマット・ディロンはめちゃくちゃかっこよかった印象が残っていたが、
36年ぶりにスクリーンで観たマット・ディロンはやはり最高にかっこよかった。
物語はなかなか救いようのない内容だ。
でも、その悲壮感の中に、なぜか心が惹かれてしまう。
もちろんあんなドラッグ狩りには、賛同も共感もできないのだけれど。

映画のエンディングで流れたデズモンド・デッカーの「Israelites」が、
強烈に耳に残っていた。
今でもこの曲を聴くと、この映画を観た18、19歳の頃を思い出してしまう。
そういえば、この映画は誰と観に行ったのだっけ?
一人で行ったような気が・・・。
劇中のマット・ディロンに憧れて、バイト代で貯めたお金でレザージャケットを買った記憶もある。

両方とも、時代もコンセプトも違う映画だったけれど、
まだアナログぜ作られていた時代の、生々しさ、質感を感じた。

そんなわけで、連休最後にとても良い時間を過ごすことができた。




2026年9月8日火曜日

カサンドラ・ウィルソン逝く・・・

先週、カサンドラ・ウィルソンが亡くなってしまった。
とてもショックだし悲しい。
御年70歳というから、まだそこまでの高齢ではなかったが、
ここ数年は活動を停止していたので、何か事情があったのだろう。
もう一度新作を聴いて、ライブに行きたいと常に思っていたから、
その願いも叶わなくなってしまった。

カサンドラ・ウィルソンに注目をし始めたのは90年代半ばぐらいからだった。
「New Moon Daughter」は今でも大好きなアルバムだし、
自分にとって衝撃的で、音楽的にも触発されたのが、
1999年のマイルス・デイビスの楽曲に歌をつけたりした名作
「Traveling Miles」だった。
「Time After Time」のカバーも素晴らしかったけれど、
オープニングを飾る「Run The Voodoo Down」なんかは、
まさに独自の世界観、音楽で圧倒された。
この時期はマイルスの60年代後期から70年代にかけての、
いわゆる”エレクトリック・マイルス”に夢中になっていた時期だから、
ものすごくストレートに衝撃をくらい、何度も何度も聴いた。

それ以降も素晴らしいアルバムを出すたび、音楽性やサウンド、コンセプトを
変えて刺激を与えてくれた。
でも一貫しているのは彼女の素晴らしい歌声であり、
どんな曲を演奏しても、カサンドラの曲になってしまうような、
そんな引力のある表現者だった。
ライブも頻繁に日本でやってくれていて、毎回必ずのように
ブルーノート東京に足を運んだ。
颯爽とステージにあがり、堂々たる姿で歌うカサンドラは、
まさにアフリカの女王のような神々しさと美しさを纏っていた。

カサンドラはアメリカのミシシッピ出身。
音楽性にも、彼女の歌声にもその根底には、ミシシッピの土地柄や、
ルーツが現れていたように思う。
サンハウスなどのデルタブルースのルーツの曲を歌ったのも、
そういった想いがあったのだろう。

素晴らしい音楽と歌声に、心から感謝を伝えたい。
これからもずっと、カサンドラ・ウィルソンの曲は聴き続けるつもりだ。
Rese In Peace, Cassandra Wilson...