2024年4月4日木曜日

オッペンハイマー

クリストファー・ノーラン監督の最新作品「オッペンハイマー」を鑑賞した。
ノーラン作品は必ず映画館で観るようにしている大ファンだが、
今作はアメリカでの上映よりかなり遅れ、ようやく日本公開された。
題材が題材だけに、大手配給会社は見送ってしまったのだろう。

しかし、内容は素晴らしく、日本人が多く観るべき映画だと感じた。
映画は決して分かりやすくはない。
政治劇であったり、オッペンハイマー自身の内面的な話だったり、
時系列も複雑に作られていて、捉えるのに少し時間がかかる。
でも難解ということではなく、仕掛けが非常に多い映画だったと思う。

ノーラン監督がテレビで「オッペンハイマー」のことを語る時に、
その名前をしったきっかけはスティングの曲だと言っていた。
「Russians」という曲だ。
自分もノーラン監督と同世代で、同じような音楽を聴いてきたので、
この曲で同じく「オッペンハイマー」の名前を知った。
アルバム「ブルータートルの夢」は1985年発売で、
当時よく聴いた。ポリスではなく、ソロでは凄腕ミュージシャンを集めて、
ジャズやAORの雰囲気があるアルバムだった。

あれから40年近く経ったが、
世界は別の構造の冷戦状態にある。
ソ連は崩壊したが、ロシアには独裁者が君臨している。
中国も独裁政権色が強くなり、ずいぶんと傲慢な国になった。
いっぽう日本は経済的には衰退し、弱ったままでいる。
アメリカもなんだか不安定だ。かつての強大な国のイメージは薄い。

核開発は今も着々と進み、北朝鮮は物騒なミサイル発射を繰り返している。
オッペンハイマーが開けてしまったパンドラの箱は、もう戻らない。
映画でも出てくるが、まさしくプロメテウスのごとく、
功績と悪名とが入り混じる存在になってしまった。

映画「オッペンハイマー」は直接的な反戦映画とかではないが、
監督が放ったこの映画のメッセージは、
とても重たいものだ。

あと、監督の過去作品とも連なる部分は感じた。
「インターステラー」の物理学や、「TENET」あるいは「ダークナイト」にも通じるテーマがあると思う。

重厚で、見応えのある作品だった。

0 件のコメント:

コメントを投稿