クリストファー・ノーラン監督の最新作品「オッペンハイマー」を鑑賞した。
ノーラン作品は必ず映画館で観るようにしている大ファンだが、
今作はアメリカでの上映よりかなり遅れ、ようやく日本公開された。
題材が題材だけに、大手配給会社は見送ってしまったのだろう。
しかし、内容は素晴らしく、日本人が多く観るべき映画だと感じた。
映画は決して分かりやすくはない。
政治劇であったり、オッペンハイマー自身の内面的な話だったり、
時系列も複雑に作られていて、捉えるのに少し時間がかかる。
でも難解ということではなく、仕掛けが非常に多い映画だったと思う。
ノーラン監督がテレビで「オッペンハイマー」のことを語る時に、
その名前をしったきっかけはスティングの曲だと言っていた。
「Russians」という曲だ。
自分もノーラン監督と同世代で、同じような音楽を聴いてきたので、
この曲で同じく「オッペンハイマー」の名前を知った。
アルバム「ブルータートルの夢」は1985年発売で、
当時よく聴いた。ポリスではなく、ソロでは凄腕ミュージシャンを集めて、
ジャズやAORの雰囲気があるアルバムだった。
あれから40年近く経ったが、
世界は別の構造の冷戦状態にある。
ソ連は崩壊したが、ロシアには独裁者が君臨している。
中国も独裁政権色が強くなり、ずいぶんと傲慢な国になった。
いっぽう日本は経済的には衰退し、弱ったままでいる。
アメリカもなんだか不安定だ。かつての強大な国のイメージは薄い。
核開発は今も着々と進み、北朝鮮は物騒なミサイル発射を繰り返している。
オッペンハイマーが開けてしまったパンドラの箱は、もう戻らない。
映画でも出てくるが、まさしくプロメテウスのごとく、
功績と悪名とが入り混じる存在になってしまった。
映画「オッペンハイマー」は直接的な反戦映画とかではないが、
監督が放ったこの映画のメッセージは、
とても重たいものだ。
あと、監督の過去作品とも連なる部分は感じた。
「インターステラー」の物理学や、「TENET」あるいは「ダークナイト」にも通じるテーマがあると思う。
重厚で、見応えのある作品だった。
2024年4月4日木曜日
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